何年経ってもふと思い出す、過去の小さな出来事は?
ふとした瞬間に、心の引き出しが勝手に開いてこぼれ落ちてくる。それは、教科書に載るような人生の転機でもなければ、涙を流した大失恋のようなドラマチックな事件でもない。ただの、なんてことのない日常の、ある一場面の切り取りだ。
それは、あまりにも数が多い。どれか一つを選び出して「これが僕の思い出です」と語るのもどこか忍びない。自分の中で納得もいかない。かといって、そのすべてをなんて、到底できそうにない。最近多いのだ。
昔の記憶が夢に出てくるとか聞く。けれど、僕の場合はまったく違う。夢には全く現れない。それは、何でもない瞬間にパチリと脳裏に映し出されるだけだ。寝て見る夢とは違う。寝て見る夢はパラレルワールドだ。それは全く別世界のようなのだ。登場人物は利害関係全く見知らぬ人だ。利害関係者と言っても中身は別人だ。今の僕が生きている世界とは別のタイムラインで、あの瞬間の僕がまだあそこに立ち尽くしているかのような、そんな不思議なリアリティがあるのだ。
あ、話を戻そう。そのパチリと思い出す出来事は、いつだって自分中心だ。当たり前のことだけれど、そこには確かに、当時の頼りない僕が居る。そして不思議なことに、その光景を静かに俯瞰して見つめている、冷徹なほどに客観的なもう一人の僕がいる。その二人が重なる妙な一瞬だ。そこには、強烈な後悔や、燃え上がるような喜びといった感情は伴わない。ただ、ある一瞬の、空気感はある。あの時、あの場所に。


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