ほとんど記憶に残らない。

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見知らぬ人との偶然な出会いの中で、ポジティブな印象として残ったことを教えてください。

正直に言えば、その問い自体が自分にはほとんど意味をなさない。まず、見知らぬ人に不用意に接しない。これは冷淡さではなく、ひとつの処世の作法だ。街ですれ違う人、電車で隣に座る人、何かの拍子に目が合う人――彼らは私の世界の外縁にいる存在であり、積極的に関わる理由がそもそもない。

ただし、仕事は別だ。不本意ながら営業に出た日々の中で、初対面の顧客から思いやりのある洗練した対応を受けたことがある。それは確かに記憶に残っている。しかしそれは「仕事という文脈」があったからこそ残ったのであり、偶然の出会いとはまた違う話だ。

問題は、先入観にある。見知らぬ人、という時点で私の中の扉はすでに閉まっている。たとえその人が道を親切に教えてくれたとしても、落とし物を拾ってくれたとしても、あるいは思いがけず温かな笑顔を向けてくれたとしても――後になって特定の記憶として掘り起こせば、確かに好印象の部類に属するかもしれない。だがその瞬間、「見知らぬ人」というフィルターがすでにかかっているがゆえに、記憶はほとんどそこに根を張らない。

つまり、印象が残らないのは体験がなかったからではなく、受け取る側の構えが最初からそうなっていたからだ。

見知らぬ人との偶然の出会いにポジティブな印象を見出すこと――それは、ある種の人々にとっては詩になるかもしれない。だが私にとってそれは、答えようのないナンセンスキャプションだ。問い自体は美しいのかもしれないが、僕の器には、うまく収まらない。

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