仕事は変わっても変わらない

Published by

on

テクノロジーによってご自身の仕事はどのように変わりましたか ?

これまでは、デジタルツールに助けられた話、便利になった仕事の話を素直に綴ってきた。ところが今年は、少し様子が違う。

昨年来、私は絵を描くことを本業にしようとキャンバスや紙と向き合う日々が続いている。傍から見れば、これ以上なくアナログな仕事だろう。筆を握り、絵の具をこね、自分の手だけを頼りに一枚の絵を仕上げていく。しかし、仕事の全体像を少し引いて眺めてみると、話はそう単純ではないと気づく。

まず、仕事だと売上の記録、経費の整理、請求書の発行——これらはクラウド会計システムにまるごと任せている。以前なら帳簿と格闘していたような作業が、今ではスマートフォン一つでほぼ完結する。絵を描くという仕事を成り立たせるための「裏方」を、テクノロジーがしっかり支えてくれているのだ。それだけではない。画材そのものにも、テクノロジーの歴史が積み重なっている。顔料の精製技術、キャンバスの織り方、筆の製造工程——現代の画材は、長い年月をかけて磨かれてきた工業技術の結晶だ。私が何気なく手に取っているチューブ一本にも、数え切れないほどの試行錯誤が詰まっている。さらに言えば、「描く技術」自体も広い意味でテクノロジーと言えるかもしれない。遠近法、色彩理論、光と影の捉え方——これらはすべて、先人たちが体系化し、継承してきた知の技術だ。私が今日学んでいる表現技法もまた、そうした積み重ねの上に乗っている。筆先のアナログな動きの奥に、幾層もの「技術」が宿っているわけだ。

かくして結論はこうなる。仕事はたしかに変わった。しかし、テクノロジーのお世話になっているという事実は、何ひとつ変わっていない。

アナログだろうとデジタルだろうと、どんな仕事を選んだとしても、私たちはすでにテクノロジーの上で生きている。それは逃れようのない構図だ。むしろ、それを窮屈に感じるより、縁の下で支えてくれる存在として素直に受け取った方がいい。キャンバスに向かいながら、私はそんなことをぼんやりと考えている。

コメントを残す